街
過ぎ去りし思い出は灰色を纏い、雨風をこえて進みゆく小舟。
亡きいのちの風は、廃墟となる建物、空き地の時空を流れゆく。
失われた心は映写機を写せず、喪失とも気づかずに。
浪漫は灯火でないと信じつつも、帯びてゆく悪は哀しみの影。
暮れなずむ色彩は彩の旅の途中、土にしっかりと時を刻む。
街よ、包みこまれた人々の雲になれ。
時折、雨を降らせて泣いてくれ。
濡れかたまる土の重さは彼方にはわからず、
その人たちの顔がみえていない。
施された仮面は不自然な笑みのままで、
柔らかな土へと針を刺す。
突き刺された針は見る影もなく、
土色の色相環は、この街をさらに包みこむ。
深い呼吸は同じ調べで、瞬間の膨らみにいのちを馳せる。
航海は在るもので突き進み、後悔は時を戻せぬなら、
いのちの限り突き進む小舟。
波風とともに燃えよ、たましい。
真っ白になるまで、消えゆく海へ。
投稿者:Kumashiro 2017/05/18 21:42 ライフスタイル