流れゆくものを一瞬でもこの胸の中に

秋も深まる10月21日金曜日。幼い頃からよく遊んでいた松原神社の近くのライブハウスRAG Gで周年パーティーが開催されました。お店が今年で150年になるということを、前年に、お世話になっているオーナーのYさんにお話ししたところ、心地よく引き受けていただきました。その経緯もあり、好きなミュージシャンの矢野絢子さん、黄啓傑さんをスペシャルゲストとしてお迎えすることができました。とてもありがたいことでした。その日はどういうパーティーになれば来ていただく方々が楽しんでいただけるのだろうかということを、オーナーに相談しながら進めていきました。今回のパーティーに関しては、佐賀という街で「神代眼鏡店」が150年という歳月、みなさまとともに歩んでこれたことを一瞬立ち止まって抱きしめ合えればというような感覚でした。そうであるならば、その時間をともに過ごさせていただくことが必要だと。そして、その大切な時間のためには音楽が心に染み入るようなアーティストのちからが必要だと思いました。僕の心には2年前に佐賀のRockRideで聴いて、観て、強く印象に残った矢野絢子さんが浮かんできました。矢野さんの曲の中に「ニーナ」という曲があります。ひとつの椅子の永い物語を歌われた曲です。そのひとつの椅子は様々な出逢いの中で、いくつもの物語を見つめていきます。そしていろんな人たちと出逢っていくのです。椅子職人のおじいさんによってつくられ、ニーナと名付けられた椅子。ニーナの曲の最初の部分でこう歌われています。「出来上がった椅子があんまり美しかったので死んだ妻の名前をこっそり入れたのさ」 このフレーズって凄いなと感じていました。椅子というものの生と最愛の妻の死。ここは語りかけるように歌われているのですが、とても重たく深い表現です。椅子には赤い石がふたつ付いていました。おそらく椅子はそのふたつの目で時を見つめてきたのでしょう。

ふたつの目で時を見つめてきた…なんだかお店の眼鏡を想像してしまいました。高祖父(曽祖父の父)の頃から眼鏡は時をこえて様々な物語を見つめてきたのだと思います。そしてお店に関わりのある多くの人たちが、ものには人がこもると信じてきたんだと思うのです。お店では時々、お客様が、亡くなった祖父、祖母が使用していた眼鏡がお店のものなので形見にしたいとお持ちになられることがあります。そしてその大切な眼鏡にレンズを入れて形見にされるのです。お亡くなりになられたお客様が、長い間きれいに大切に眼鏡を使用していただいた証がセリート(レンズやフレームを磨く布)がしっかり汚れてしみになっているところに表れています。

矢野絢子さんがTAP the POPという人気の音楽ウェブコラムで「ニーナ」の誕生秘話を語られています。以下抜粋です。

ニーナという名のこの椅子は、時を超えて所有者たち皆に愛された。それは最初にこの椅子を作った椅子職人のおじいさんが最大の愛を込めて作り上げたからだと私は思う。そして”名前”というものは、すべての人が最初にいただく愛の言葉だと感じる。

先日のパーティーに来ていただいた方、綺麗なお花や愛情のある風船を贈っていただいた方やお花屋さん、メッセージをいただいた方、ライブで素敵な音楽をプレゼントしていただいた城島さんやバンドの方、矢野絢子さん、黄啓傑さん、ダンサブルでカッコイイ選曲をしてくれたdjの友人、RAG Gオーナーyさん、スタッフの方、美味しい料理を提供していただいたキングキッチンさん、150年お世話になってきた多くのみなさまに厚くお礼申し上げます。これからも街の眼鏡店として「神代眼鏡店」という最初にいただいた大切な屋号を心に、みなさまと歩んでいきたいと思います。

投稿者:Kumashiro  2016/11/02 20:02アイウェア